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WOLF RPGエディター制作RPGゲーム一作目 「練と学の薬草物語」 

 いよいよゲーム制作にまで手を出しましたよ~。というわけで、ゲーム制作RPG第一弾「練と学の薬草物語」です。
 まだ、ゲーム制作を始めたばかりなので本当に簡単なゲームとなりますが、よろしければやってみてください。戦闘バランスは個人的に頑張ったつもりです! 二作目も作成中ですので、(これは長編の予感)それもまた随時紹介していきたいと思います。
 というわけで、ささっとこのゲームの紹介をさせていただきますよー。

ゲーム紹介

タイトル:練と学の薬草物語
おおよそのプレイ時間:1時間
カテゴリ:チュートリアル系RPG

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ストーリー

 練の父から薬草を取りに行くように言われ、近くの村に向かう練。だが、村の村長から「薬草王に奪われて、薬草がない」と告げられてしまう。
 「取り返す力がないから仕方ない」と大人たちは諦めるが、練は諦めない。気弱な青年の学を巻き込み、薬草を取り戻す冒険に出発だ!



キャラクター

キャラクター




内容一部抜粋スクリーンショット




シンプルでありながら洗練されたシステム


システム



短いながらもシンプルにまとめられたストーリー


内容


結構強いボスキャラたち


ボス



ダウンロード

こちらからどうぞ

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15.最終決戦 

「来ましたか。おやっ、一人足りませんね。そうですか。デッドはフェイドが請け負ったということですね。それは残念だなぁ。世界の王たる僕の最高の力を死神にお見せしようと思ったのですが、そのご本人は不在。まぁ、いいでしょう。ウォーミングアップには丁度いい」
 俺はエネドとアオイのいる場へたどりついた。そこはいかにも権力者が座っていそうな椅子がよく目立つ広い場所で、エネドは堂々とその椅子に座っていた。そんなエネドの隣で横たわっているアオイもいる。相変わらずいけ好かない野郎だ。セリフといい態度といい、明らかに俺たちを暇つぶしの材料のように捉えている。
 しかし、これがあのエネドだとはな。今にでも襲い掛かってきそうなほどに血走り尖った目をしている。初めて出会ったときは冷たい目だと感じたものだが、今はまるで正反対だ。これがヴェルを取り込んだという証というわけか。
「アオイは無事か?」
「ええ。少し体力を消耗してはいますが無事ですよ。僕がヒカリを殺めるわけないじゃないですか。子を死に追いやる親がどこにいるというのです」
「レッド! こいつの言うことなんかに耳を傾けちゃだめよ。私のことは気にせず集中して!」
「あらあら、まだ言葉を発する体力があるとは……さすが僕の娘だ」
 ……娘? ヒカリ? 俺には事情が呑み込めん。だが、アオイはエネドに何かを知らされている。これくらいは俺にでも予想がつく。今はそれに集中している場合じゃないか。さまざまな事実は戦いの後に聞けばいい。そんな事実すら笑えるくらいの最後にな。
 俺はエネドに向けて拳を構える。俺は今から、怪物を取り込んだ怪物と対峙する。ただの中和剤の俺が、怪物に挑む。だが、俺には不思議と怖さがない。ここにはアオイもサラもいる。俺の後押しをしてくれる仲間がいる。そう簡単に屈してなどやらんぞ。
「あらあら、血の気の多いことで。ですが、正直僕の相手としてあなたは役不足なのですよ。いくら有能な僕の血が混ざっているとはいえど、あなたの素体は、フェイドの組織を使って生み出した半端の半端です。元々の母体が半端者のフェイドじゃあ、僕の相手にはなりそうもありませんねえ」
 余裕の笑みを浮かべてそう言うエネド。俺がフェイドから生み出された……か。普通なら驚くところなんだろうが、不思議と気持ちは落ち着いている。むしろ、やはりそうかという気分だ。
 だから、俺はフェイドを不思議と憎むことができなかったのだな。親を憎める子はいないか……だが、今はそんなことはどうでもいい。俺の敵は目の前にいるエネドだ。奇しくもフェイドは敵だしな。助けるつもりも毛頭ない。
「お前はヴェルを取り込んでおしゃべりがしたかったのか?」
「あまり驚かないようで。少しつまらないですね」
「そんなことでいちいち驚いている暇はないからな」
 エネドの目がまた冷たくなる。空気も重苦しくなってきたな。
「分かりました。お望み通り僕の力を見せてあげましょう。光栄に思ってくださいよ。本来ならば、あなたごときに見せるような強さじゃない。その代償として、あなたが戦闘不能になった時点で、ここにいるお嬢さん方を血祭りにあげます」
 これはますます負けられなくなったな。サラにもアオイにも傷なんてつけさせん。
「私は大丈夫だよお兄ちゃん。あんなやつ……倒しちゃえ!!」
「ええ。私も信じているわ。不思議と怖さもないの。私のナイト様が側にいるかもしれないわね」
 サラ、アオイ。お前たちの後押しは俺の力のもっとも大きな原動力だ。その後押し、全力で受けるぞ。
「行くぞ、エネド!!」

「これはこれは……安い茶番をお見せくださいまして。無能の咆哮ほど醜いものはありませんねえ。それでは、見せてあげましょう。どれだけ手をつないだって敵わない力というものをね」
 エネドがそう言葉を発したその瞬間、エネドの手に光りのオーラのような物が集まり、それが収縮して一本の剣となった。なんだこれは。フェイドが持っているような現存物じゃないな。それよりももっとおぞましい何かだ。
「エナジーブレード……怪物の力に僕の知力。そして、この自然の塊があなたを切り刻む。自然の型その一……風の太刀」
「!?」
 エネドが剣を一振りしたかと思えば、そこを発信源として大きな風圧が俺たちを襲う。しかし、なんて風圧だ。建物を揺らし、遠くに離れているサラまで吹き飛ばされそうになっている。
「風のように軽やかに。疾風の剣」
 エネドの剣が無数の刃に見えるほどに軽やかな太刀で襲ってくる。なんだこれは、剣技というレベルじゃないぞ。かわすどころか受けきることすら……
「がはっ……」
「自然の型その二……炎の太刀」
 もう、次の攻撃に移っている? 早すぎるぞくそったれめ。体制を立て直す時間もない。動け俺の身体。こいつは食らってはいけない匂いがする。
「炎のように力強く。業火の剣」
「舐めるなよ!」
「甘いですよ」
「……ごはっ」
 エネドの力強い一太刀をなんとかかわす。だが、なんて力だ。かわしたはずなのに、その風圧だけでダメージを受けてしまった。
「自然の型その三……水の太刀」
「これで決めます。水のように柔軟に。流水の剣」
「か……はっ」
 しなやかな一撃が俺を襲い、その場に倒れる。エネド、怪物を食った怪物か……まさかこれほどとはな。
「他愛もない。半端者がどれだけ吠えても、しょせんは無能の遠吠えでしかありません。さて、次はどちらが僕に立ち向かってくるのですか?」
「……」
 俺は何をしている。サラとアオイの後押しをもらって、ボスも俺にエネド討伐を託してくれた。力がないから立てませんなんて、そんな言い訳が今さら通用するか。
 俺だって……ここにいるんだ。いろいろなものを背負ってここにいる。なのに、俺は立てそうもない。俺の決意なんてものはしょせんこの程度だったということか? サラとアオイが危機にさらされている今、俺が倒れていていいはずがない。だが、身体はいうことを聞いてくれない。
 それはきっと、身体のダメージ以上にエネドに恐怖を感じているからだ。確かに世界の王を自負するだけの力がある。あまりに圧倒的だ。俺は、エネドに勝てない……

『諦めんのはまだ早すぎるだろうが。ナイトだったら責任もってお姫様を守り通せ』 

 なんだ。頭の中に声が流れてくる。今、ボスと対峙しているはずの、不思議と憎むことができないあの声が。
「やっぱりお前じゃエネドは止められねえか? お姫様を守るなんて荷が重すぎたか?」
 どういう原理だ。俺の頭にフェイドの声が響く。そして、不思議と俺に語りかけている。しかも、どうやら俺は鼓舞されているようだ。本当、敵かどうか分からない男だな。
 正直、俺はエネドを止められないと感じ始めている。サラとアオイを守りたい。だが、力の差はどうにもならないものだ。どれだけ意気込んでも埋まらない差というものはある。守りたいが守れないというのは無力感が増すな。
「なら寝ちまいな。そうすりゃ、もうお前は何も背負う必要なんてねえ。楽になれるぜ」
 楽にか。そうかもしれないな。ここで眠ってしまえば俺は楽になれる。だが、俺が寝てしまえば……
「そうさ。二人のお姫様は守れねえだろうな。でも、見てみろよ。二人とも目は死んでねえ。お前がエネドから目を背けてる間も、愛しのお姫様はお前を信じてるぜ」
 ……俺を、信じてる? こんな弱い俺をか?
「ほんと、ナイトはヒーローじゃねえってのにな。期待されるってのは半端者からしたらつらいよな。そんな力ねえってのに」
 サラもアオイも俺を信じて悲鳴すらあげない。怖いはずなのにそんな素振りすら見せない。なのに、なぜ俺が怖がっている。一番力のあるはずの俺が、なぜ一番怖がっている。
 俺を信じて後押ししてくれる手を俺が振り払って、地に倒れて弱音を吐いて。それでいいはずがない。そうだ。俺はまだ意識がある。ということはまだ戦える。そんなチャンスを、俺は放棄しようとしてしまっていた。
「俺たち半端者は、ヒーローみてえにかっこよくはなれねえよ。でも、意地は平等にはれるんだぜ。なら、とことん足掻いてやろうじゃねえか。ヒーローが引くくらいみっともなく足掻いてよ、一泡吹かせてやろうぜ」
 俺はまだ立てる。サラとアオイを傷つけさせてたまるか。俺は最高のハッピーエンドを迎える。空を青くするために希望の炎を胸に宿して……このまま諦めて迎えられるはずがないだろう。
「そうだぜナイト。行ってこい。お前はあんなやつには負けねえよ」

「まだ僕に立ち向かいますか。しかし、あなたは何もできない。あなたはしょせん中和剤だ。死神でも怪物でも死神殺しでもない。しょせんはデッドがここにたどり着くまでの余興でしかないのですよ。そういえば、そろそろ決着がついたころですかねえ。フェイドが倒れ、デッドがここまで来ることでしょう。ぼろぼろに傷ついた身体でね。まさにラストに相応しい。初めからこうなるべきだったんですよ! そのための余興にはさっさと死んでいただきましょうか。くくくっ……はははははは!!!!」
 エネドの高笑いが建物の中に響き渡る。確かにそうかもしれんな。これだけの力に俺が対抗できる術はない。だが、それでも俺は拳を振るうしかない。これは俺だけの問題ではない。俺の背にはサラもアオイもいる……フェイドもな。それだけの後押しを受けて、このまま終わってなどいられるか。
 半端者の意地か。確かに俺はそれほど強くない。ボスのように、かっこよくだれかを守れそうもない。だが、それでも拳を振るうしかない。それが真実だ。そう考えれば、頭がすっきりしてきた。もう、余計なことを考える必要はない。ただ、目の前にいる憎くてたまらない怪物に向けて、俺の拳を振るう。
「まったく無駄な足掻きを。無能がいくら向かってきて……がはっ!?」
 届いた。俺は今、どれだけの力を込めているかも分からないし、どれだけの力がでているかも分からない。だが、無我夢中で放った俺の拳は、確実にエネドの心臓を捉えた。
「これは一体……」
 まだだ。こんなものではエネドを倒すことなど敵わない。俺の意識が続くまで拳を振るい続けよう。みっともないがむしゃらな攻撃だが、俺には丁度いいだろう?
「ぐっ」
 一発。
「がっ」
 二発。
「ぐがっ」
 三発。
「……舐めるな無能が!!」
 エナジーブレードを振るわれたことで、一度距離を置く。
 だが、だいぶ効いたようだな。初めて焦ったエネドを見たぞ。ようやく俺は、エネドの手の上から逃れることができたようだな。
「……この世に生を受けて、もういくつになるのでしょう。僕自身も数えきれないほどの時を生きてきた。ですが、僕は今ほどの屈辱を味わったことはありません。無能だからといって侮り過ぎました。見せてあげましょう。久しぶりに僕は必死だ!!」
「なんだこれは……」
 エネドのエナジーブレードから黒い闇のようなものが覆われ始める。俺にはそれが真っ暗な空に見えた。これが最後の壁なのだろうと俺の直感が告げる。
「エナジーアグネゲート……終末の剣!!」
「……」
 かわせない。受けきることもできない。この闇は俺を包むには十分すぎた。俺の意識が持っていかれる。
「……やはり僕は最強だ。僕は負けない。あなたはしょせん無能な半端者だ! 僕とあなたでは生きてきた歴史が違うのですよ。そんな短い時間で守れるものなんてたかが知れている。でも、僕をこれほど傷つけた罪は大きいですよ。ご褒美として葬って差し上げましょう。有能な僕に葬られるんだ。光栄に思いなさい」
 俺は殺されるのか。いや、そういうわけにはいかない。俺は半端者だ。できることといえばヴェルの落ち着かせる中和剤となることくらいだ。だが、そんな俺が何かを守ろうとしている。世界の王となった怪物を倒そうとしている。
 まだ何かあるはずだ。考えろ。最後まで諦めずに、足掻きながら意地をはれる術を。
「さて、最後です。あなたには最後のお祈りをする時間も与えません。それでは、さようなら!」

「……させないわ。束縛!!」
 声がする。俺が守らなければならないはずのお姫様の声が。そして、その声は確かに束縛といった。禁術であるはずのその魔術の名前を唱えた。
「なっ……ヒカリ! あなた、禁術を……」
「これでも、私は有能な魔術師様であるあんたの娘よ。今、私に魔力の流れが見えたわ。そして、その魔力は私に力を貸してくれた」
「どこに魔力が……僕が感知できない魔力が発現しているとでもいうのですか。さすがはヒカリだ。やってくれますね」
「確かに私はあんたの娘かもしれないわ。不死の血も流れているかもしれない。でもね、私はヒカリじゃなくてアオイよ! 自分でつけたアオイっていう立派な名前があるの。赤色の瞳をしてるからっていう安易なネーミングだけどね、私はそんな名前を存分に気に入っているのよ。だから人違いね。私はあんたの子になった覚えなんてないわ!!」
 チャンスだ。アオイが俺にチャンスをくれた。今、エネドは動くことができない。今しかない。なのに、打つ手もないぞ。
「レッド! 魔力の発現点はあなたからよ! あなたから魔力が流れてるわ」
 俺から魔力が流れている? 俺は魔術なんて使えない。なら、どこから魔力が……

『神経を研ぎ澄ませ。お前は、俺の組織とエネドの血から造られたんだぜ? お前にも魔力の流れが読めるはずだ。それに、忘れんなよ。悲しいじゃねえか』

 またフェイドの声が聞こえる。いや、今回は声だけではない。姿もはっきりと見える。本当、どういう原理か分からないな。
 魔力の流れ……思考をすべて魔力の脈をたどるのに使おう。神経を研ぎ澄まし、魔力の脈を探す。
「……」
 俺の身体のどこかから強大な魔力の脈を感じる。温かく冷たい脈だ。希望から絶望まで、すべての感情が入り混じったようなその脈は、まだ流れを読み始めた俺ですら感付けるほどだった。
 俺は、その流れに身を任せるように手を動かす。すると、ひとつの答えにたどり着いた。
「……ナイフ」
 その正体はフェイドから受け取ったナイフだった。そうか、フェイドはナイフに魔力を溜めていた。そりゃ、エネドは感付けないはずだ。一番憎いと感じている相手だからな。そして、そんなナイフをフェイドは俺に託した。つまり、これをエネドに刺すことができれば何かが起こるということだな。
 だが、さっきの一撃で身体が動かん。後少しで青い空を掴める。そのはずなのに、その少しが限りなく遠い……。
「半端者ってやつはどこまでも半端だな。こんなところでお前は終わっちまうのか?」
 憎たらしい顔で、フェイドが俺に語りかける。
 俺も動きたいさ。だが、動かん。俺の身体が言うことを聞いてくれん。
「動かねえなら動かすしかねえだろ。ヒーローってやつは一見華やかに見えるが、逆境からの逆転を何度も繰り返して立ち上がってきた。だからこそヒーローって呼ばれるんだぜ?」
 動かすしかない……か。
「そうさ。半端者同士足掻きまくってよ、一度くらいはヒーローになってやろうじゃねえか」
 ヒーローか。そうだな。俺が一番してはいけない選択は諦めることだ。諦めると空は黒く染まり、希望の炎は消える。つまり、ハッピーエンドは見られない。悪いことづくしだな。
 だが、それを俺が足掻くことで変えることができるのなら、全力で足掻こう。どれだけ醜くてもいい。それで結末を変えることができるのなら、世界一かっこ悪い、泥にまみれたヒーローになってやろうじゃないか。
「おぅ。泥にまみれたヒーローってのも悪くねえ。なってやろうぜ兄弟」
 そうと決まれば動くしかないな。動け。ここで動けん足など俺にはいらん。何度でも繰り返す。動けえぇぇぇぇ!!

『やればできるじゃねえか。さぁ、反撃開始だ。まずはお前のヒーローショーを見せてみろ』

 やるじゃないか俺の足。だが、動きは安定しないな。目の先にエネドはいるというのに、そこに近づくだけでも一苦労だ。だが、この一歩は大事な一歩だ。俺の一歩はフェイドの思いを乗せている。
 フェイド。お前は本気でエネドを殺したいと言ったな。その思いをナイフに込めたといったな。今、その思いをエネドに届けるぞ。今ある力のすべてをつかってナイフを刺しこもう。これが俺の最後の足掻きだ。半端者の意地を見せてやる。
 エネド。確かに俺はただの中和剤かもしれない。無能な半端者かもしれない。だが、お前の周りには強い敵がたくさんいるぞ。最強になる前に仁徳を磨くべきだったな!!
「そんな小賢しい真似でこの僕……が……どうしてです。どうして動けない! 魔術で右に出るものはいないこの僕が、魔術に縛られるなど!!」
「させないわ。意地でも縛り続けてやるわよ」
 アオイも必死だ。サラもこんな怪物を目の当たりにしても、力強い声援を俺に送り続けてくれている。
 俺のヒーローショーは手伝ってもらってばかりだな。一人じゃ何もできない無能なくそったれ野郎だ。だが、それでいい。それで空が青くなるのなら。希望の炎が灯るのなら。ハッピーエンドを迎えられるのなら。それ以上に望むものはない!
「いくぞフェイド。ここからはお前のヒーローショーだ!」
「かはっ……」
 俺が突き出したナイフは、見事にエネドの心臓を捉えた。思いは届けたぞ。フェイド、後はお前に賭ける……。

『やるじゃねえか。後は俺に任せな。見とけ。これが俺の、最初で最後のヒーローショーだ』

「これは予想外ですねえ……しかし、こんなナイフごときで僕が……これは!?」
 エネドが苦痛の表情を見せる。これは相当効いているようだな。フェイド、何かとてつもないものを仕込んだようだな。
「……フェイド。あなたも驚異の怪物だったということですか。まさか調律を覚えていたとは……。これが調律……自らのすべてをかけて僕を……」

『言ったろ。俺はいつかお前を殺すってよ。でも、お前は死んでもあの世に来るな。あの世だってお前みたいなやつは歓迎しないぜ。だが、俺とお前の仲だ。だから、最後に一言だけ残してやるよ。何よりも悲しい言葉だぜ。「さよならだ。じゃあな」』

「……いい顔をするようになりましたね。まさか、あなたに足元をすくわれるとは思ってもみなかった」
 ナイフから光が発される。それと同時に、エネドが青ざめた顔で震え始めた。
 フェイドの思いは確実に届いたぞ。最高のヒーローショーを見せてもらった……いや、様子がおかしい。エネドはまだ諦めた表情をしていない。
「ですが……僕は世界でもっとも有能な世界の王だ。こんなところで無能な半端者どもに負けるなんて、僕のプライドが許さない!」
 なんという威圧だ。諦めが悪すぎるぞくそったれ。
「呑まれてなんてやりませんよ。今、僕は耐えるだなんて惨めな行為を強いらされている。屈辱だなぁ。でも、最後に笑うのは僕だ。今はもう、それで構わない。舐めるなよ無能ども。こんなことで世界の王を倒そうだなんて……そんな考えは甘いのですよ!!」
 光が弱まってきた。エネドの精神にフェイドの調律が押され始めているということなのか。どうする、ヒーローならこんなとき、どう行動して切り抜ける……いや、俺たちはしょせん半端者だ。今、俺たちはヒーロー気分を味わっているに過ぎん。
 なら、半端者らしく足掻くしかないだろう。一人でなんとかできないのなら、後押しするしかないだろう。
 フェイド。これが最後のヒーローショーだ。このヒーローショーは俺でもお前でもない。俺たち兄弟のヒーローショーだ。気休めの後押しを受け取れ!
「これは何の真似ですか? ナイフをつかんで何の意味があるというのです」
「ただの気休めの後押しだ。だが、そんな気休めが力になることもある」
「やはり、あなたは無能な半端者だ。得意気にそんな意味もないことを!」

『そうでもねえぜ。無駄に長く生きたけどよ、だれかから力をもらったのは初めてだ。案外、悪いもんじゃねえぞ。少なくとも、俺は力がみなぎるね』

「そんなふざけた力で、この僕を……ぐっ!?」
 調律が発する光が増す。いくぞフェイド。俺たちで怪物を超えてやろうじゃないか!
『なら、俺たちで証明してやる。そんなふざけた力で怪物を超えることもあるってことをな!!』
 その瞬間、建物を包み込むほどの光があふれだした。見たかエネド。これが、俺たち半端者の意地だ。
「そんな……世界の王に相応しいこの僕が、こんな無能な半端者どもに……。ですが、まだ終わっていません。僕は世界を牛耳るべき生物だ。世界でもっとも有能な世界の王だ。またいつかどこかで……僕はきっと……」
 ……光の先にあったのは、地に倒れ、息絶えたエネドと、虚ろな表情をしている青い瞳をした少女だった。これはつまり……調律を使用したことにより、ヴェルを取り込んだエネドからヴェルが取り出されたということか。
 終わりだ。空が……暗い空が青く溶け込んでいく。
「最後にいい土産になったな。最高のヒーローショーだったぜ」
 最後の土産か。魔力の流れを読んだときに気付いたが、フェイドは魔力に思念を送っていたんだな。だが、その魔力も調律で尽きた。つまり、フェイドは消える。せっかく手を取りあえたのに、切ないものだな。
「そんなことねえよ。こいつは受け売りだが、この世ではさよならでも、あの世でまた会える。そんときにゆっくり話そうぜ」
 そうだな。そのときは料理でも作ってやる。俺の料理は美味いぞ。お姫様たちのお墨付きだ。
「そいつは楽しみだ。だが、まだ料理作ってる暇はねえぜ。まだ終わりじゃねえ。怪物を倒したらまた怪物ってやつだ。ヒーローってのは大変なもんだな」
 そうか。まだ終わっていない。ヴェルがいた。血に飢えた怪物がまだ……。
「おぅ。だから、俺はもう行くぜ。満足するまで生きて、満足して死んで……あの世で土産話でも頼むわ」
 あぁ。用意しておこう。それじゃあ……さよならだな。
「ちげえよ。こういうときは『またな』って言うんだ。あの世でまた会うんだからな」
 そうだな。またなフェイド。あの世でまた会おう。
「おぅ。またな兄弟」
 そう言ってフェイドは消えていった。しかし、いつもにたにたしていたくせに、あんなきれいな笑顔もできるんじゃないか。満足して死ねてよかったな……兄弟。

 さぁ、怪物を倒したらまた怪物か。本当、ヒーローというものは大変だな。だが、様子が変だ。虚ろな瞳からは涙が流れ出ている。いつものヴェルの様子とは違う。
「早く、僕殺して……じゃないと、また僕迷惑かけちゃう」
 なんだこの感じは。なんだこの気持ちは。俺はヴェルの前に足を進めた。今のヴェルは無防備な少女の姿だ。あまり強さも感じない。これはきっと宿命というやつだろう。そして、ヴェルはその宿命から一時的に逃れている。そんなぎりぎりの場所から、俺に「殺して」と語りかけている。
 俺はこのまま殺していいのだろうか。このままヴェルの命を殺めて、俺はハッピーエンドを迎えられるのだろうか。
「レッド。ヴェルを宿命から解放してあげて」
 躊躇している俺に語りかけるアオイ。
「アオイ……だが、ヴェル自体は悪いやつじゃないんだろ? なら、そんなヴェルを殺していいのか?」
「私はエネドから事の真相を聞いたわ。ヴェルは、エネドに宿命をかけられてからずっと戦っている。私がこんなこと言うのはお門違いかもしれないけど、ヴェルを楽にしてあげて欲しい」
 宿命か。すべてを狂わせたのはこの宿命というやつだ。ボスもフェイドもヴェルも……そんな宿命に人生を狂わされた。そうかもしれないな。狂わされた人生ならば早く終わらせてやるべきなのかもしれない。だが、それを終わらせる役というのは、とてつもない虚無感に襲われるだろう。
 ならば、俺がそれを担おう。俺はヴェルの中和剤だ。これでヴェルの苦しみが中和されるのならば、最後の中和をしようじゃないか。俺の手で。俺の拳を真っ赤に染めてでも。
「ヴェル。今、楽にしてやるからな」
「近づいてくる……懐かしい匂い、近づいてくる」

「お前ら、無事か!」
「ロンド!」
 俺がヴェルに拳を打つ前にボスが現れた。間がいいのか悪いのか分からないタイミングだな。
「レッド、状況は?」
 俺は今までの状況を詳しく話した。しかし、こんなにゆっくりしている暇はないのだが……ボスは落ち着きすぎではないだろうか。
「……そうか。間に合ったか」
 そう言うと、ボスはサラの下へ駆け寄る。
「……パパ?」
「傷はないようだな。よかった」
「うん。お兄ちゃんとお姉ちゃんが守ってくれたの。私は、何もできなかった……」
「いいんだ。仲間にとって重要なのは戦果ではなく、意志だ。サラは最後までみんなの仲間として戦ったさ」
「パパ……」
「俺も、サラを見習って戦ってくる。俺の最後を、見届けてくれ」
「最後……?」
「あぁ、俺は今から命を懸けて約束を果たそうと思う」
 そう言うと、ボスはサラの側を離れようとする。俺は、今からボスが何をしようというのかが分かってしまった。これは、俺が口をはさめる問題ではない。
 だが、サラからすれば不自然な話だろう。これで納得できるはずなどない。ボスも不器用な男だ。
「なんで!? パパも私を置いていくの? だめだよ……いかないでよパパ。パパは私の最後の家族だよ? パパがいなくなっちゃったら、私、家族がだれもいなくなっちゃうんだよ? それに、パパは落ち着いたらたくさん遊んでくれるっていったじゃない……パパはその約束を破っちゃうの?」
 サラの気持ちが建物内に響き渡る。その瞬間、ボスはサラの下を離れるのを止め、頭をそっと撫でた。
「すまんな。俺はどうしようもない親だな。だが、今のお前にはレッドもアオイもいる。ファミリーたちも一緒に遊んでくれるだろう」
「だからって!」
「パパな、昔にヴェルと約束をしたんだ。『俺はお前を見捨てん。最後は一緒に笑うんだ』とな。俺は、その約束を守りたいんだ。数千年越しの約束になってしまったが、今はその最後のチャンスなんだと思う。こんな俺を止めてくれてありがとう。俺は、自慢の娘を持った」
 頭を撫でながら笑顔でサラに語りかけるボスに、サラは涙を流しながらボスを抱きしめる。
「そんなこと言われたら引き止めることなんてできないじゃない。私、次にパパに会うときに全力で甘えちゃうんだから。今から甘えられない時間を取り戻せるくらい遊んでもらうんだからね。もう、約束破らないでね。約束だよ?」
「あぁ……そのときはママも一緒だ。じゃあ、またな」
「うん……またね。私、パパとママがびっくりするくらいきれいになってやるんだから……」
 ボスがサラの頬にキスをしてその場を去る。向かうはヴェルの下、ボスの、最後の大仕事だ。

「久しぶりだなヴェル」
「……デッド?」
「久しぶり過ぎて忘れてしまったか?」
「ううん。デッド分かる。僕、殺しに来た?」
「いや、そうじゃない」
「なんでだ。僕、また悪いことする。だから殺す。デッドに殺されるなら僕はうれしい」
「大丈夫だ。今、悪いことができなくしてやる。俺の生命と引き換えにな」
 ボスのその言葉にヴェルは驚いて否定する。虚ろな瞳だったヴェルはどこへ行ったのだろうか。おそらく、ボスの出現で宿命が引っ込んでいるのだろう。今のヴェルは、とても悪いことをするようには見えない。
「言っただろ。俺はお前を見捨てん」
「でも、僕笑顔なれないよ。デッドが消えちゃったら、僕、笑顔なれない」
「それは困るな。俺は最後にヴェルを笑顔にしたいんだ。でも、俺は頭がよくないからこんなことくらいしか思いつかなくてな。最後はお前を宿命から解放して終わりを迎えたい」
「それならヴェルも一緒に行く。デッドと一緒なら怖くない」
「お前はもう少し人生を楽しんで来い。ここにはいいやつらがたくさんいる。大丈夫、どうせ長くても百年だ。たったそれだけの時間のお別れだ」
「……また、会える?」
「あぁ」
「絶対?」
「あぁ」
「デッドは笑える? 最後に、笑える?」
「当たり前だ。だれを救いたいがためにここまで生きてきたと思ってる」
「でも、今は僕笑えない。デッドが僕のため死ぬのに、笑顔なんて作れない」
「今は、だろ? 忘れてるぞ。笑顔は?」
「……最後」
「そうだ。最後に笑ってこっちにこい。そのときは俺も笑って出迎えてやる」
「ありがとう。デッド……大好き」
「ありがたい言葉だ。じゃあ……いくぞ」
「うん……」
 会話が終わると、ボスの身体が黄金の輝きを帯びる。それはまるで、生命を燃やしているようだった。
「精神を研ぎ澄まし、生命を媒体に……俺の無駄に長く生きた生命だ。まだまだこんなものじゃない」
「……」
「ララ、フェイド。俺も死に場所に満足しているぞ。俺の死に場所はここだと胸を張って言える。調律!! ヴェルの束縛を取り除き、人間に構築せん」
 輝きが輝度を増し、視界が光に包まれる。だが、俺はその輝きの中にボスの姿を見た。

『レッド。サラを、ヴェルを、アオイを……みんなを頼んだぞ。俺は一足先に待ってる……またな』

 ボスの言葉が聞こえた。俺は、ボスにみんなを任された。全力でその役目を果たそう。こいつらの最後を笑顔で終わらせてやると、今、この場で誓おう。
 光が消えると、そこにボスの姿はなかった。これですべては終わった。希望の炎は尽きることなく、暗い空は青くなった。

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